グラフで読み解く「新型コロナウイルスの現状」
新型コロナウイルスの影響で学校は突如、休校。会社もリモートワークを推奨するところが増えています。新聞もテレビも新型コロナウイルスに関する報道ばかりで、誤った情報も含めて、いろいろな情報が飛び交っています。
ここではWHO(世界保健機関)などが公表している数字をもとに、グラフから「新型コロナウイルスの現状」を読み解いてみます。
まずこちらのグラフを見てください(冒頭のものと同じです)。発生地である中国を除いた、新型コロナウイルスの国別の感染者数です。韓国は東南部の大邱(テグ)地域を中心に感染者が増えており、イタリア、イランと続きます。日本やシンガポールは感染者数がそれほど拡大していません。
日本に関しては検査をしていないからだという声もあり、実際にイタリアのコンテ首相は「もし同じくらい厳格な検査をほかの国で実施したら、その国でも数字が増える可能性は排除すべきではない」と語っています(参考:クーリエ・ジャポン)。
中国全体で感染が広がっているわけではない
続いて、中国国内での様子を見てみましょう。
上記のグラフからわかるとおり、これまでの感染者数はほとんどが武漢のある湖北省に集中しています。湖北省は6万6000人を超えていますが、そのほかの省に目を向けると、多くても1300人ほどです。
死者数を見ると、湖北省以外で感染した患者の致死率は低く、もっとも死者数が多い河南省でも1.55%ほどです。
次に新たに感染している人の数について見てみます。
新規の感染者も湖北省に集中しており、ほかの地域では2月21日に270名ほどの感染が確認されたものの、それ以降は50人を切っています。つまり、湖北省以外では感染の広がりをほぼ封じこめることに成功しています。
一方で、感染者が極端に多い湖北省ではウイルスの広がりを防ぐのが難しく、いまも沈静化の傾向が見られません。最初の広がりを抑えることが、全体への感染拡大防止に効果的であることがわかります。
危機的な状況は「中国以外」に移っている
最初に国別の感染者数を見ましたので、中国を除く国別の死者数も見ておきましょう。致死率は韓国が17/3150で0.5%、イタリアが21/888で2.4%ですが、イランは34/388で8.7%にも上ります。
つまり、現在は中国以上にイランでの感染者が危機的状況にあります。
しかも、感染の広がりは2月26日以降、中国以外のほうが顕著になっています。この傾向はいまも変わっていません。WHOが発表している最新のデータ(3月4日発表)によれば、その前日に新たに感染が確認された人数は中国が120人なのに対して、中国以外は2103人にのぼります。
(なお、「中国」と「中国以外」にわけてグラフを作っているのは、WHOが同様のレポートをつくっていることによるものです)
2月下旬以降は、特に韓国、イタリア、イランでの増加が目立っています。
前述したように国ごとに状況が異なり、イランのように致死率が高い国もあれば、日本や韓国のようにほとんどの感染者が死にいたっていない国もあります。ですが、世界全体でみると致死率が少しずつ上昇しているのは気になるところです。
感染者の多くは重症化せず、「風邪みたいなもの」といった報道もなされていますが、一方で重症化しないことによって感染者がウイルスを撒き散らしてしまうといった指摘もあります。沈静化するまで不便ではありますが、感染が拡大しないように極力、不必要な移動などを慎むように努めたいと思います。