【海外記事】中国のテクノロジー業界はシリコンバレーに居場所を見出せるか?

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海外メディアの注目記事を紹介しています。今日の記事はニューヨーク・タイムズの「Can China Tech Find a Home in Silicon Valley?」から。

中国のテクノロジー業界の投資家や起業家たちが、活路を求めてシリコンバレーに目を向けている。この動きは、中国経済の長期的な低迷と政府による民間企業への規制強化によるものだ。

多くの中国のテック関係者は自国でのチャンスが減っていると感じており、特に人工知能(AI)の分野で米国での新たな投資機会を模索している。

この傾向は、シリコンバレーで開催される中国系テック関係者のパーティーなどの集まりで顕著に見られる。参加者たちの会話は、中国への不信感、米国でのAI関連の機会、そして太平洋を越えてビジネスチャンスを掴む方法に集中している。

特に積極的なのはベンチャーキャピタリスト(VC)たちだ。彼らは以前、米国の大学基金や年金基金、富裕層から資金を調達し、中国のスタートアップに投資することでアリババ、バイドゥ、シャオミ、ディディなどの大手テック企業の成長を支援してきた。

しかし現在、彼らは米中の両政府から制約を受けている。両政府とも、AI、量子コンピューティング、半導体などの先端技術への投資を制限しており、投資先企業のニューヨーク上場も困難になっている。

中国の投資家からの資金調達をためらう起業家たち

多くのVCや起業家たちは、シリコンバレーでの活動を開始するか、その計画を立てている。しかし、彼らは新たな課題に直面している。米中間の緊張により、シリコンバレーの多くの人々が中国との関係を警戒しているのだ。

有名なVC企業のなかには中国関連の投資家から資金を受け取ったスタートアップへの投資を避けるところもある。そのため、創業者たちも中国系投資家からの資金調達を躊躇している。

さらに、言語や文化の違い、そして新しい環境での再出発の困難さも、彼らの前に立ちはだかっている。一部の投資家は中国での投資を完全に清算し、米国に定住する決意を固めているが、多くは両国を行き来しながら慎重に動いている。

この現象は、中国のテクノロジー産業の発展を牽引してきた市場主導型モデルの衰退を反映している。習近平国家主席が推進する新たなビジョンは、政府主導で国家の自立を目指すものだ。この変化が中国のイノベーション能力と米国との技術競争にどのような影響を与えるかは、これからの数年で明らかになるだろう。

現時点では、中国にとって「人材の流出」が懸念される。スタートアップを育成し、テクノロジーの発展を形作ってきた世代の投資家たちが、その専門知識を活かす場を失っているのだ。

一方で、これらの投資家たちは、シリコンバレーを“約束の地”として見ている。大型の投資機会は得られないかもしれないが、小規模なスタートアップへの投資を通じて、新たな成功を見出す可能性を模索している。

この状況は、中国と米国のテクノロジー産業の関係性の変化と、グローバルなイノベーション・エコシステムの再編を示唆している。両国間の緊張が続くなか、テクノロジー分野での協力と競争のバランスが今後どのように変化していくのか、注目されている。

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